2012年7月7日土曜日

【レビュー】松尾海彦 個展「さかな」

6月26日から沖縄市のスペーストロピカルで開催されている、松尾海彦個展「さかな」のレビューです。





今回出展している松尾海彦(まつおうみひこ)さんは現在沖縄県立芸術大学の4年生。
「さかな」をモチーフに制作をしている。




一貫して「さかな」を作り続けている。彼の話では、自分が好きな魚の本質の部分を表現したい、伝えていきたいという思いがあるからだそうだ。ただ、作品にはなぜ「さかな」なのか?という問いはなく、何かの象徴としての「さかな」は不在だった。しかし、彼がその何者でもない「さかな」に偏執して描き続けていくなかで、その問いを体得していこうという姿勢が話から伺えた。




また、このドローイングのインスピレーションは自分が釣った魚を記録するための「魚拓」に関係しているのではと考えられる。彼は小さい頃に魚釣りを良くしており、その際に魚拓をしていたらしい。自分が獲得した魚を淡々と記録していくなかで、一般として魚ではなく、この今釣ったこの「さかな」の固有性とはなんだろうか?という疑問が、魚が大好きな幼少の彼の心に強く残り、「さかな」を描いてく動機となっているのではないだろうか。そんな一個人として魚という存在を遠巻きに捉えながら、彼が求める「さかな」の姿探っていた。




ドローイング以外にも新作のオブジェも展示されていた。縦に分断した大きめのガラス瓶を鏡に貼り付け、その中に稚魚を入れたものである。その稚魚は鏡面に映る自分の姿を常に意識しながら彷徨っている。普段はペットとして見られる側である稚魚が、鏡によって映る自分の姿を認識することで、見る側と見られる側がごっちゃになってしまう。魚を飼うことの残酷さや悲哀のようなものが作品から見られた。














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松尾海彦個展「さかな」
場所 : space tropical (沖縄県沖縄市中央1-16-10-2F) http://space-tropical.tumblr.com/
時間 : 11:00 ~ 18:00会期 : 2012年6月26日(火)~7月3日(火)入場無料
[アーティストトーク]2012年6月26日(火) 17:00-

松尾海彦(まつお・うみひこ)1989年 東京生まれ。2009年 沖縄県立芸術大学絵画先攻 入学現在 4年次在籍。
県立芸大日本画4年に在籍中の松尾海彦の個展を開催いたします。松尾海彦は「さかな」をモチーフに絵画、オブジェを制作しているアーティストです。今回は、彼が実際にいる魚と非現実的な想像上の魚の新作の大作絵画が数点ほか、彼が細かく発表し続けてきた魚を樹脂の中につめたオブジェ、新シリーズである瓶をまっぷたつに割って水槽を作った作品などを発表致します。